2010年05月19日

魚の目の葬式 10

L175  大学の裏門を出て、急な坂を下る。
L176  親指に力を入れて急ブレーキをかけないと足がとまら
L177 なくなるほどの坂。下りも一苦労だが、登りも大変だ。
L178  坂を下りきったところに、緑の雑貨店がある。
L179  小さな入り口だ。何回か気になって覗いてみたことが
L180 あるが、買えなかったときのことを考えると気力が萎え
L181 て、四年間ずっと入ったことがない。
L182  その雑貨店を右にまわり歩道をいく。
L183  夕暮れも終わり暗くなってくると、なぜか家路を急ぎ
L184 たくなる心理はどこからくるのだろう。
L185  家に帰ったとて、何かがあるわけではないのに。あの、
L186 家の明かりが恋しいと思う。
L187  急ぎ足になる。
L188  電球が点き始めたホームで、電車を待つ。
L189  ぼんやりと向かいのホームにいる人たちを見ていた。
L190 同じ大学の同じクラスの人たちは居なそうで、ほっと安
L191 心する。
L192  なぜか、人と向かい合うのが苦手で。特に、仲も良く
L193 ない微妙な知り合いの場合。無視していいのか、手でも
L194 振ればいいのか…。なぜそこで悩む? 自分が手を振り
L195 たいと思えば振ればいいし、振りたくないと思うなら振
L196 らなきゃいい。のに、結局は人の目を気にして、自分の
L197 思うように振る舞えないだけなのだ。
L198  面倒くさい。
L199  だから、他人と接するのは疲れるということは知って
L200 いる。
L201  でも、そこからどう脱するのかがわからないでいた。
L202  今までの二十二年間の性格が簡単に変わるわけでもな
L203 く、長い付き合いになりそうだ。
L204  早く、家に帰りたい…。
posted by にお とよむ at 23:14| 千葉 ☔| Comment(0) | 本編・魚の目の葬式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月18日

猫と住む、わたし。


ポツッ ポツッ ポツポツポッポッポッポツ

L1   頭上で連打する雨の音。
L2   傘にあたる雨だ。
L3   雨振る夜に、まわりの傘の色に溶け込むには地味な、
L4  ベージュの傘をさして帰る。
L5   帰りがけのコンビニでお弁当をあっためてもらい、人
L6  気の無い脇道へと入る。
L7   その石畳に雨が落ちて、跳ね返る。窪んだところに水
L8  たまりができて不意に出現するのに、すばやく対応する
L9  ため、足下に神経を集中させて歩く。パンプスに水が滲
L10 みてくる。
L11  街頭がうしろから、傘を通して行く手をぼんやりと照
L12 らす。
L13  その輪の外に、ぐちゃりと汚れた何かがあった。
L14  雨にぐっしょりと濡れた雑巾。誰かが昼間、そこに置
L15 きっ放しにしていったのだろう。
L16  その横を通り過ぎた時、わずかに声がしたような気が
L17 して、振り返った。
L18  誰もいない。
L19  コンビニの袋を握り直して、再び歩き出そうと前に踏
L20 み込んだ。
L21  と、足下の雑巾がーいや、とても小さな小さな猫が、
L22 頭をもたげて鳴いていた。
L23  ふるふると、震えている。
L24  その仕草をじっと見下ろした。
L25  子猫は、立ち上がろうとしているようだがそこまでの
L26 体力が無いようで、水たまりの中にうずこまったまま私
L27 を見上げた。
L28  しばらく、雨にうたれて見守った。
L29  子猫が、這いつくばりながらこちらに顔をむけて大き
L30 く鳴き出した。
L31  私に、拾ってもらいたいの?
L32  子猫はますます激しく鳴き出した。
L33  その子猫を拾い上げた。顔を見る。
L34  いっそう鳴く。
L35  そっと、コンビニで買ったお弁当の上にのせて、家に
L36  帰った。

  

posted by にお とよむ at 23:25| 千葉 | Comment(0) | 本編・猫と住む、わたし。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

魚の目の葬式 9

L172  そして今日はひとり帰った。
L173  遠田さんたちは随分と長く図書館で調べものをしてい
L174 たので。

    
  きょうは、
posted by にお とよむ at 22:39| 千葉 | Comment(0) | 本編・魚の目の葬式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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