2010年05月10日

魚の目の葬式 1

 大学4年生になった高山えな。
 日々同じことを繰り返しつつも、小さなことに幸せをみいだす
ぼんやりな女子大生の日常。
 大学、バイト、それから時々迷信。

本編↓
L1   秋雨の降る中、父方の伯父さんの葬儀が静かに
L2  とりおこなわれた。
L3   誰もが終止無言で、読経にまじる雨の音が高山家の
L4  小さな空間に大きく響いた。
L5   私はただそれを聞いていた。
L6
L7   葬儀が終わり、帰りの車の中で、あたたかい空気に
L8  包まれてほっと一息ついた。
L9   2年前、母は父と離婚し旧姓に戻っていた。
L10   私は、今さらながら名字を変えるのも面倒で、その
L11  まま父方の姓を名のることにしたのだ。
L12   それでいながら母と暮らしている。
L13   私と父は携帯のメールをやりとりしているが、母は
L14  連絡を絶っている。このような格別の用事がない限り
L15  は。
L16   窓の外に、雨とともに流れる街なみを見てしんみり
L17  した。
L18   この細かな雨が、また伯父さんの人生を象徴してい
L19  るようだと。
L20   けれどすぐに、それは、この天候に左右された自分
L21  の感傷が生みだした幻想であって、亡くなった伯父さん
L22  は明るい人だったと思い返す。
L23   とても気さくで、会うたびにごとに人見知りする
L24  私によく声をかけて、お小遣いをくれた人だった。
L25   六十四歳。
L26   それは長い人生だったのか、短い人生だったのか。
L27   私にはずいぶん遠い到達点で、よくわからない。
L28   でも、満足して逝ったのならいいなと思った。
L29   こんな感傷にふけるのは、雨のせい。
L30
L31   前の座席では、今日一日足をだしてくれた小母さん
L32  と、何かの昔話しに講じていた。
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posted by にお とよむ at 17:59| 千葉 ☁| Comment(0) | あらすじ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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