2010年05月31日

魚の目の葬式 16

L290  涼しげな風を受けながら本を読み、午後からバイトへ
L291 出た。
L292  のんびりしているようでも、母子家庭なので金銭的に
L293 そんなに余裕があるわけではない。
L294  市内の大型ショッピンブセンター内のパン屋。そこで
L295 閉店まで売り子をする。
L296  平日は暇でいい。
L297  しかも、売れ残ったパンをお持ち帰りできる。といっ
L298 ても、残るのはだいたい決まったパンで、しかもそこそ
L299 この味だ。美味しいものは残らない。
L300  それでも、勿体ないのでたとえ飽きがきても私はしっ
L301 かり持ち帰る。
L302 「いらっしゃいませー」と疑わしげな笑顔で七時間接客
L303 をして、今日の労働を終えた。
L304  帰りの電車の中で、窓の外に写る流れる景色を見なが
L305 らぼんやりと思った。ーーー帰ったら、まめパンだ。
L306  母は何を食べるだろうか?
  
posted by にお とよむ at 23:59| 千葉 ☁| Comment(0) | 本編・魚の目の葬式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月29日

魚の目の葬式 15

L273  そう思うとこの冷気も身に優しい。
L274  闇に沈んだ樹々に目を配りながら夜に親しむように、
L275 鼻歌を歌いながら歩いていった。
L275  青白い光りを放つコンビニで文具を買うと自宅に戻
L276 り、机に向かった。
L277  夜の方が、長く一人の時間が持てるので落ち着いて
L278 何事にも対処できる。
L279  午前二時に、布団に入った。
L280
L281  翌日、九時に起きて階下に降りた。
L282  母は仕事に出てすでに居なかった。
L283  とりあえずテレビをつけて、開け放たれたキッチン
L284 のダイニングテーブルに着いた。
L285  調子が出なくて、テーブルの上に突っ伏す。
L286  ニュースともワイドショーともつかない番組をなん
L287 となく聞きながら、頭を働かせる努力をする。
L288  そうだ、とりあえずカレー!
L289  温めて食べて、力を出そう。



訂正 m( __)m
posted by にお とよむ at 23:33| 千葉 ☁| Comment(0) | 本編・魚の目の葬式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月27日

魚の目の葬式 14

L260  いつものように甘い美味しいカレーを、つい食べ過ぎ
L261 て三杯もよそってテレビを見ていた。
L262  うちのカレーは甘口にりんごをすりおろして作る。
L263  他では食べられない特別仕様だ。
L264  食べ終わってから、コンビニへルーズリーフと蛍光
L265 ペンを買いに出かけた。
L266  玄関を出ると、肌寒い夜の空気の中に窓から光りが
L267 一条もれていた。微かに甘いカレーの匂いも漂っていた。
L268  明るい光りの部屋と暗い外。それを分け隔てるのは、
L269 一枚の壁。または窓。たったそれだけなのに、こんなに
L270 も温度差があるなんて不思議だ。
L271  私はあの光りの中から出てきて、また光りの中へ帰っ
L272 ていく。それに安堵の心持ちを覚えた。
L273  そう思うと、この冷気も我慢できる。
L274  まわりの木々を見ながら、遥か彼方の青白い光りへむ
L275 かって歩いて行った。
posted by にお とよむ at 23:39| 千葉 ☔| Comment(0) | 本編・魚の目の葬式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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