2010年05月13日

魚の目の葬式 4

L99   正直、卒論にいきづまっていた。
L100  やっばいなー。
L101
L102  電車を降りると、大学にむかう道すがら昨日の話しを
L103 思い出し、足の裏に神経を集中してみた。確かに、魚の
L104 目から地面に足をつけているようだ。その一点に付加が
L105 集中して皮膚が硬くなってしまったのだろうか? でも
L106 そんなに不自然な歩き方はしてないと思う。このままほっ
L107 ておけば直りそうだ。



今日のいいわけ
posted by にお とよむ at 22:16| 千葉 ☁| Comment(0) | 本編・魚の目の葬式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月12日

魚の目の葬式 3

L77
L78   翌日、四限の講義を受けるため家を出た。
L79   気持ちのよい秋晴れの昼下がり。見上げた空は高く、
L80  なんとなく気持ちがうわついた。
L81   通い慣れた通学ルート。考え事をしていても、大学に
L82  自然と辿り着くことはわかっていた。
L83   ところが、この前、電車で推理小説なんどを読みふけっ
L84  ていたら、降りる駅を乗り過ごしてしまって、なんだか
L85  戻るのもばからしくなったので、そのまま終点近くの日
L86  暮里駅まで乗っていった末に、有名な羽二重団子という
L87  ものを食して帰ってきた。手みやげはあつらえなかった。
L88  さぼりだからだ。
L89   講義をさぼるのは、私のお得意なので、誰からも何も
L90  いわれなかったし、もちろん母はそんなこと知る由もな
L91  い。
L92   私は、自分の好き勝手に誰の追求を受けることなく、
L93  なんでもやれるだろう。大学は自由だ。それが、この三
L94  年間学んできたことだった。他に得ることもあっただろ
L95  うが、私の身についたのはそれだった。けど、後悔はな
L96  い。
L97   ただ、飽きていた。
L98   短大にすれば良かったかな。とは、何度も思った。
 
posted by にお とよむ at 19:07| 千葉 ☀| Comment(0) | 本編・魚の目の葬式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月11日

魚の目の葬式 2

L33   その話しに耳を傾けた。が、私の知らない人について
L34  評していたので、聞いていながらも、二人の声はすぐに
L35  脳内から泡のようにぷつぷつと消えていった。
L36   記憶にとどめられない話しにすぐあきて、何も考えず、
L37  家までの道のりを眺めた。
L38
L39   玄関の前で雨を払うと、慌ただしい気持ちで、二階の
L40  自室へむかった。窮屈な黒服を着替え、ハンガーにかけ
L41  た。細かな水滴をハンカチで拭く。しわになるから…と
L42  いうよりは、スカートがあまり好きではない。
L43   喪服は持っていないので、唯一の黒のスーツを着ていっ
L44  た。大学の入学式もこれだったし、少し前の就活にもこ
L45  れで行った。黒色ということに甘え、葬儀にもこれだ。 
L46   いい加減、社会人になったら喪服を用意しなければな
L47  らないかと思いつつ、その気はほとんどない。
L48   一階に降りていくと、母は帰ってきた服装のまま台所
L49  で立ち働いている。
L50   雨の降る秋の夜は、なんとなく肌寒い。
L51   年中出しっぱなしの炬燵に火を入れあたった。手足が
L52  暖まってくると、今度は口寂しい。ピーナッツか、煎餅 
L53  でもあればな…と思いながら、テレビを見ていた。
L54   いれたてのお茶を置いて、隣りに座った母に、
L55  「私、足の裏にうおの目ができたみたい」と言った。
L56  「いつから?」
L57  「よくわかんないけど、たぶん一週間前くらいかな…」
L58  「あら、そう」
L59   湯のみを両手で包むようにしながら、母が、やだねぇ
L60  とつぶやいた。
L61  「なんで」
L62  「昔からいうんだよ、魚の目が出来ると身近で死人が出
L63  るって」
L64  「うそ、じゃぁ、五つあるよ」と、話しにのると、
L65  「それじゃあ、あと五人? 四人?」と肩をすぼめた。
L66  「あんたが七つの時、左足に大きな魚の目ができてね。
L67  そしてひいじいちゃんが亡くなったんだよ」と、本当に
L68  心配そうに話すので、
L69  「だって、迷信でしょ、そんなの。ほんとに四人も五人
L70  も死ぬわけないじゃない。うおの目で」
L71  「まぁそうだけど。昔から葬式の先触れみたいにいわれ
L72  てるのよ、魚の目は」
L73   ふーん、と気のない返事をすると、
L74  「あんたも気をつけなさい」と言った。
L75   何を気をつければいいんだか。それより私は、お菓子
L76  が食べたかった。腹が減った。

posted by にお とよむ at 17:20| 千葉 ☔| Comment(0) | 本編・魚の目の葬式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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